コストや手間をかけて採用・教育した新入社員が、入社早々に「辞めたい」と言い出したら、企業としては大きな損失となります。新入社員の不安に寄り添って退職を防止するには、入社前からの手厚いフォローが効果的です。
本記事では、新入社員の離職防止策を10選紹介します。「辞めたい」と言われたときの対応も紹介しているので、ぜひ参考にしてください。
日本において、どのくらいの新入社員が退職するのか、どのような理由で退職するのか見ていきましょう。
日本における新入社員の離職率について、厚生労働省のデータを紹介します。
2024年10月に厚生労働省から、2021年3月に学校を卒業した就職者の離職状況に関する情報が公表されました。
このデータから、入社3年以内の新入社員(若手社員)の離職率は3割以上ということが読み取れます。
出典:新規学卒就職者の離職状況(令和3年3月卒業者)を公表します|厚生労働省
高校や大学を卒業して就職したものの、3年以内に退職する人の割合は3割以上となりますが、その人たちはなぜ退職を選んだのでしょうか。
2023年3月に株式会社リクルートが社会人1~3年目の435人を対象に行なった調査で、以下のような退職理由が挙がっています。
このことから、労働条件や働き方、人間関係が大きな理由となっているようです。
出典:「新人・若手の早期離職に関する実態調査」の結果を発表|株式会社リクルートマネジメントソリューションズ
新入社員の早期退職が増えると、企業にとってどのようなデメリットがあるのか解説します。
新入社員を含む若手社員の退職は、採用活動にかけた手間やコスト、さらに入社後の教育にかけたリソースなどが水の泡になり、企業にとって大きな痛手となりかねません。
新卒者を1人採用するには、おおよそ90~100万円のコストがかかっているといわれています。新卒者を10人採用した場合、3割の3人が早期退職してしまうと、単純に300万円程度が失われることとなります。
また、入社後の研修やOJT、メンター制度などにもリソースがかかっているでしょう。単純な運用コストだけでなく、先輩社員は新入社員のOJTやメンター制度に協力するにあたって自身の業務時間が減るため、業務の生産性にも影響を与えているといえます。
退職によって空いた穴を埋めるため、新たな人材を採用しなければなりません。しかし、少子高齢化による労働力不足が深刻化している現代の日本では、すぐに優秀な人材を採用するのは難しいでしょう。
もちろん、新たな採用コストや教育コストもかかり、費用面でも大きなダメージを受けかねません。
早期離職率が高い企業に対して「何か問題があるのだろうか」といった疑念を持つ人もいるかもしれません。そうした疑念から企業イメージが低下する可能性があります。
企業イメージの落ち込みにより、翌年以降の新卒採用で応募者が減ったり、従業員のモチベーションが下がったりすることもあるでしょう。また、顧客からのイメージダウンで売上にも影響する可能性は否定できません。
新入社員が早期退職すると、社内の他の従業員のモチベーション低下にも影響します。
「せっかく手をかけて教育したのに……」「自分たちが何かしてしまっただろうか」などの意識が生まれかねません。社内全体の士気が下がってしまい、業務のパフォーマンスにも影響することも懸念されます。
新入社員の退職を未然に防ぐには、どのような方法があるのでしょうか。まずは、新入社員の入社前に企業が行なうべき防止策を紹介します。
新入社員の内定後、入社までの期間にあまりコミュニケーションを取らない企業は少なくありません。しかし、コミュニケーションが少ないと新入社員は質問や疑問があっても聞けず、不安が大きな状態で入社することになるでしょう。
新入社員の退職を防ぐには、内定後もコミュニケーションを取り続け、入社までの手厚いフォローが重要です。たとえば、以下のような施策が効果的です。
先輩社員へ質問しやすい環境を作ったり、内定者同士が交流できる場を整えたりすることで、新入社員の不安感を減らして信頼関係を構築できるでしょう。入社前から仲間たちと信頼関係ができていると、新入社員は会社への帰属意識が強まり、入社後もモチベーションを保って仕事に臨めます。
新入社員によくあるのが、入社してから「思っていた仕事と違う」「望んでいた仕事ができない」など、入社前に抱いていたイメージと入社後の現実のギャップを感じて、退職を選択してしまう事例です。
こうした事態を起こさないために、先輩社員から話を聞ける場を設けたり、部署の仕事内容を詳しく説明したりするなど、入社前にしっかりと社内の情報を伝えましょう。
新入社員が安心して仕事に臨み、自信を持って即戦力として活躍できるよう、体系的に学べるオンボーディングプログラムを設計しましょう。緻密なオンボーディングプログラムにより、会社のことや仕事内容についての知識を身につけ、実践を重ねてスキルを習得できます。
オンボーディングプログラムは、入社初日から1週間ごとの研修内容や学習内容を設定し、1カ月経ってどのくらいのレベルを目指すか明確にしておくと、新入社員は自分がやるべきことが見えて目標を持ちやすくなります。最初は企業理念や部署の役割などの学習から始まり、徐々に具体的な仕事内容を学んで実践を重ねていくことで、段階的なスキルアップが目指せるでしょう。
新入社員は、入社したばかりで「自分はこの会社でやっていけるだろうか」「仕事を覚えられるだろうか」などの不安や悩みが多い状況です。そうした不安を取り除ける制度を導入し、安心して仕事ができる環境を整えましょう。
たとえば、実務経験を通じてスキルを習得していくOJT制度や、先輩社員と1対1でコミュニケーションを取れるメンター制度、他部署と親睦を深められるシャッフルランチ制度などがあります。
新入社員の不安に寄り添ったフォローやコミュニケーションは、信頼関係を構築して離職防止に役立ちます。入社後の離職防止策を見ていきましょう。
新入社員が発するサインに気づくことは、上司や先輩社員の重要な役目です。入社したばかりで自発的に質問したり意見を言ったりできないという気持ちに寄り添い、新入社員から発する些細な兆候も見逃さないようにしましょう。
辞めたいと考えている人は、以下のような兆候が現れる傾向にあります。
このようなちょっとした変化に気づき、適切な声かけやフォローをするようにしましょう。
緊張で自発的に話しかけられない新入社員は少なくありません。上司や先輩社員は自身の業務で忙しいかもしれませんが、なるべく新入社員を孤立させないよう、目配りをして声をかけましょう。
たとえば、新しい業務を任せるとき「このマニュアルを読んでやってみて」と指示することもありますが、新入社員はマニュアルだけでは理解できない可能性もあるでしょう。しかし、新入社員は業務を丸投げされたと感じ、質問できずに抱え込んでしまうケースも見受けられます。質問しやすいように近くにいてあげることが難しければ、チャットや社内SNSなどのツールでいつでも連絡を取れるようにしましょう。
新入社員とは定期的に1on1ミーティングを行ないましょう。1対1で直接話すことでコミュニケーションを取れるだけでなく、新入社員の悩みを聞き出したり適切なアドバイスをしたりできるため、関係性の構築につながります。
1on1ミーティングは「隔週」や「月1回」などの定期的な実施が効果的です。定期的に話すと新入社員は「サポートしてもらえている」と感じられるうえに、上司は新入社員の変化に気づきやすくなります。
1on1ミーティングでも、なかなか本音を話せないという新入社員もいるでしょう。匿名で回答できる従業員満足度調査などのアンケートを実施すると、会社や仕事への本音を聞き出せる場合があります。
匿名だと誰が悩みを抱えているかわかりにくいですが、会社に寄せられた不満や要望は多くの従業員が感じていることかもしれません。そのため、早急に改善に取り組むことで、新入社員の離職意欲を低下させる効果が期待できます。
若年層は日ごろからSNSを利用しており、他者からの「いいね」やコメントが身近に存在する世代のため、承認欲求が高い傾向だといわれています。入社への歓迎メッセージや仕事ぶりへの称賛などを贈ることで、「自分が必要とされている」という意識になり帰属意識が高まるでしょう。
それには、サンクスカード制度がおすすめです。サンクスカード制度とは、従業員同士が感謝・称賛を贈り合う制度で、エンゲージメントの向上や相互理解の促進を実現します。
新入社員へ贈るメッセージの例文はこちらの記事で紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。
新入社員向けにモチベーション研修を実施するのも効果的です。モチベーション研修とは、「どんなときにやる気が出るのか」「どんなときモチベーションが下がるのか」など自分自身を分析し、モチベーションに影響を与える要素や条件を理解する研修です。従業員が自身でモチベーションを管理できるスキルを身に付けられれば、仕事がうまくいかなくても退職を考えることはなくなるでしょう。
多様な施策を講じていても、新入社員が退職の相談をしてくることはあります。もしも「辞めたい」と言われたら、まずは理由を傾聴しましょう。
このとき重要なのが、本音を聞き出すことです。退職の理由を聞いても「仕事がうまくいかない」「家庭の事情」など“建前”を伝えてくる新入社員もいるでしょう。しかし、実は本音を隠している場合もあるため、質問の仕方によって本音を聞き出す工夫が必要です。
このように質問して、本音を聞き出しましょう。本音を聞き出せれば、解決の糸口が見つかるかもしれません。
新入社員の早期離職は、採用・教育コストの無駄や企業イメージの低下などのネガティブな影響が少なくありません。離職防止のために、新入社員の入社前からコミュニケーションを取り、不安を取り除くことが重要です。また、入社後も1on1ミーティングやサンクスカード制度などでフォローし、不安や悩みを相談できる環境を整えましょう。
新入社員の早期離職を防ぐサンクスカード制度の導入・運用には、チームワークアプリ「RECOG」の活用がおすすめです。社内に称賛文化を根付かせ、新入社員のエンゲージメントを高められるでしょう。
詳しい機能はこちらの資料で紹介しているので、ぜひダウンロードしてみてください。