コラム

2024.10.17
2024.10.17

辞めそうな部下の兆候とは?対応方法や上司が注意すべきポイントも解説

部下の退職はチームにとっても、会社にとっても大きな痛手。優秀な部下から突然「辞めたい」と言われたら、焦って引き留めてしまうのではないでしょうか。
しかし、辞めると決心してからの退職慰留は上手くいかないことが多く、肝心なのは「辞めようか迷っている段階」でどう対応するかです。
辞めそうな人には、いくつかの特徴が見られます。本記事では、辞めそうな部下の兆候や前兆、慰留の際のポイントなどを解説しますので、離職率にお悩みの方はぜひ参考になさってください。
 

なぜ辞めそうな部下を事前に把握する必要があるのか?

 
辞めそうな部下を早めに把握する理由は、慰留を成功させる可能性を高めるためです。
近年ではリモート面接を実施している会社もあるため、在職中に転職活動を行ない、転職先が決まった状態で上司に報告するケースが多々見られます。優秀な部下ほど自分のキャリアをよく考え、自身の中で退職の決意を固めてから報告することが多いでしょう。しかし、新天地が決まっている状態で慰留するのは非常に困難です。
 
辞めそうだと早めに察知できれば、部下の不満や悩みを一緒に解決することで、引き留められる可能性が高まります。退職理由になっている悩みを解決する方法は、部署異動や働き方の変更など、さまざま考えられます。
 
せっかく採用した従業員が辞めることは、会社にとって大きな損失です。採用はコストが大きく、自社で活躍できる人材に育てるためには上司や先輩従業員の時間と労力もかかります。またこの間、上司や先輩従業員は自分の仕事に100%集中できないため、どうしても生産性は低下します。
さらに離職率が高いと「職場環境に何らかの問題があるのでは」と思われ、会社のイメージダウンになりかねません。人材不足にもつながるため、部下の辞めそうなシグナルをキャッチし、退職を未然に防ぐことが大切です。
 

部下が会社を辞めたいと思う理由

 
人間関係や仕事内容、職場環境など退職を考えるきっかけはさまざまです。辞めたいと考えるきっかけを知ることで、辞めそうな部下を早めに把握しましょう。
 

人間関係が上手くいってない

辞めそうな部下は、人間関係が上手くいっていないことがよくあります。
「同じ部署・チームの同僚とそりが合わない」「愚痴ばかり口にする人がいる」など同僚との関係はもちろんのこと、上司のやり方や方針に不満がある場合にも環境を変えたいと考えるようになります。部下の意見を聞き入れないワンマン体質の上司や、判断や指示に一貫性がない上司の下では、部下が力を十分に発揮できず、やりがいを感じにくくなるでしょう。
また先輩や上司は、自分の”未来の姿”でもあります。会社でキャリアを積んだ先にたどり着く姿として、先輩や上司を尊敬できなければ「この会社で働き続けて大丈夫だろうか」「もっと成長できる環境に身を置いた方が良いだろうか」と不安を感じます。
人間関係が良好でないと、仕事で悩みを抱えていても周りに相談できません。悩みを解消する方法が見つからず追い込まれてしまった結果、「退職」が頭をよぎり、辞めそうな状態に陥ることがあります。
 

仕事内容にやりがいや成長を感じられない

近年、仕事を通してスキルアップや成長、自己実現することを大切にしている人が増えています。ルーティン業務やスキルアップが望めない仕事では「この仕事は何の役に立っているのだろう」とやりがいや成長を感じられず、働く目標を失ってしまいます。キャリアアップのための転職が身近になっているからこそ、モチベーションを維持できない環境で漫然と時間を過ごすよりも、新たな場所でチャレンジした方が良いのではと考えるようになるでしょう。
また、正当な評価を受けていないと感じる場合にも、モチベーションや貢献意欲は低下します。チームに貢献し目標達成しているにも関わらず、評価が低く昇給・昇進が望めなければ、自分の力を適切に買ってくれる場所で働きたいと考えるのは自然なことです。転職活動をする中で、自分の経験やスキルを高く評価してくれる会社に出会うことができれば、退職の決意を固めてしまうため、辞めそうだと気付いた段階で対処することが重要です。
 

労働条件が悪い

「残業時間が長い」「給与や福利厚生が良くない」など労働条件のマイナス面も、部下が会社を辞めそうになる理由の1つです。
ワークライフバランスを保つことができなければ、リフレッシュの時間を十分に確保できず、疲労やストレスから心身の不調を招きかねません。また、家族や友人と過ごす時間も削られ「この環境で働き続けることは果たして良いことなのか」「自分の仕事量が多いのではないか」と疑問や不満を抱き、それが職場に対する不信感に変わります。対価である給与が低く、福利厚生も不十分であれば、その不満は一層強くなるでしょう。
待遇面の条件だけでなく、フレキシブルな働き方といった勤務体系面での条件も重要です。子どものお迎えや介護、通院のための一時的な中抜けが認められていない、在宅勤務ができないなどの制約も、働き続けるうえでハードルになることがあります。部下が辞めそうだと感じた時には、働き方がライフステージに合っているかも見直しましょう。
 

会社を辞めそうな部下の兆候・前兆

 
辞めそうな部下の言動には、共通してよく見られる特徴やサインがあります。日々部下と関わる中で、そのちょっとした変化に気付くことが大切です。
 

愚痴や不満をよく口にする

どれほどモチベーション高く働いている従業員であっても、職場環境や仕事内容に対して多少の不満は持っているものです。しかし、その不満が蓄積して溢れると「辞めたい」と思うようになるため、日常的に愚痴や不満が口をつく状況は、辞めそうなサインといえます。
不満や愚痴は他のメンバーにも伝染し、職場の雰囲気を悪化させることから、個人やチーム単位で解決できる内容であれば早めに対処しましょう。
一方で、退職を決心すると「もうすぐ辞めるから、どうでもいい」と関心を失い不満すら言わなくなるため、不満を言っている間が辞めそうな部下を引き留めるチャンスとも考えられます。
 

コミュニケーションをあまりとらなくなる

会社を辞めそうになると帰属意識が薄れるため、周りとの関係を大切にする気持ちがなくなります。また、退職を検討している後ろめたさから、上司や周囲のメンバーとの関わりを避けようとする人もいます。
そのような辞めそうなサインが、顕著に表れるのが挨拶です。これまで欠かさず挨拶していた部下が挨拶をしなくなったり、明らかに元気がなくなったりした場合には注意しましょう。
その他、仕事の依頼や雑談の声掛けに対して反応が薄くなる、会議の場で発言を求められても意見が出なくなるなども、辞めそうな部下の特徴です。
 

モチベーションや生産性が低下する

仕事に対するモチベーションの低下も、部下が辞めそうになっている兆候です。「もう辞める仕事だから」と評価を意識せず、最低限の仕事しかしなくなったり、手を抜いてミスが増えたりと、生産性も低下します。
また、会議で意見を言わなくなる、新しい提案をしなくなるといった変化も見られます。仕事に対するモチベーションが下がることで「より良くするには何ができるか」という主体的な思考や言動もなくなるでしょう。消極的な姿勢や生産性の低下はチームにも悪影響をもたらすため、辞めそうだと感じたら早めに部下との面談の機会を設け、今の率直な気持ちを確認することが大切です。
 

休みや遅刻早退の回数が増える

出勤状況は、労働意欲と結びついているケースが多々あります。普段なら通常通り出勤するような軽い体調不良でも、労働意欲が低下している場合には休んだり遅刻したりするようになります。辞めそうな状態になると、周りからの評価や人間関係を大切にする気持ちが薄れ、休みや遅刻の心理的ハードルが下がるためです。
また、有給休暇を取得する回数が急に増えることも辞めそうなサインの1つです。転職活動の面接や有休消化など、退職に向けた準備である可能性があります。
純粋な心身の不調による休みや遅刻であっても、その状態が続くと健康上の理由から退職につながることもあるため、同じく注意が必要です。
 

辞めそうな部下への対応方法

 
辞めそうだからといって、接し方を大きく変えると逆効果になることもありますが、コミュニケーションや業務内容の見直しなど、辞めそうな部下の慰留のためにできることはさまざまあります。
 

日常的にコミュニケーションを取る

日常的にコミュニケーションを取ることで、仕事に対して現在どのようなモチベーションを持っているか、辞めたいと思う原因や不満はどこにあるのかを把握できます。
不満を早期かつ的確に理解すれば、部下が辞めそうな状態になる前に、悩みや問題を解決できる可能性が高まります。例えば、人間関係や仕事内容に悩んでいる場合には部署を異動したり、心身の不調に悩んでいる場合は一度休職期間を設けたりすることが考えられるでしょう。
また、普段から積極的にコミュニケーションを取ることで、信頼関係の構築や心理的安全性の向上を図ることができます。関係性が構築できていると、辞めそうになった時に部下は悩みを打ち明けやすくなるでしょう。
 

部下を尊重する

どのような理由で辞めたいと思っているのか、部下の率直な意見を受け止め、想いや価値観を尊重した対応策を考えることが重要です。具体的には、待遇面・職場環境に不満を持っている場合は労働条件を見直したり、キャリアアップを理由に辞めそうなのであれば、自社でそれを叶える方法を検討することができます。会社にキャリアのロールモデルがいる場合は、その先輩従業員との面談の機会を設けることも効果的です。
辞めそうな状況を変えるためには、話し合いの中で部下が「これなら、この会社で働き続けられそう」と前向きな気持ちで、キャリアアップのイメージを描けることがポイントになります。
 

業務内容や評価を見直す

業務内容への不満が理由で辞めそうな場合には、その業務の目的や方法を見直すこと、担当業務を変更することが考えられます。具体的にどのような点に不満があるのかをヒアリングし、部下のスキルを活かして、やりがいを感じられる業務を任せられないか検討しましょう。現在の部署で希望を叶えられない時には、辞めそうな部下に部署異動を提案することも1つの方法です。
さらに、評価方法についても見直す必要があります。正当に評価されていないと感じる場合は、上司だけでなく同僚からも評価を受けられる360度評価やピアボーナスなどの導入を検討すると良いでしょう。上司だけでは把握できない、普段の働きやチームへの貢献といった部下の良い面を多角的に評価できます。
 

辞めそうな部下を引き留める際に注意すべきポイント

 
辞めそうな部下を慰留する際は、想いや本音をしっかりと聴き、受け止めることが大切です。そのうえで、辞めてほしくないことを素直に伝えると良いでしょう。
 

傾聴に徹する

辞めそうな部下の想いや考えに、まずはじっくりと耳を傾けることが重要です。上司として思うところや言い分もあると思いますが、受け止める姿勢を大切に、部下が本音で悩みや不満を話せるよう聞き手に回りましょう。退職理由を本音で引き出すことで、辞めそうな原因である問題や悩みを部下と一緒に解決できます。
本心を話してもらうためには、部下が話しやすい雰囲気を作ることがポイントになります。気負わず話せるようランチ面談を設定したり、場合によっては部下が信頼している先輩従業員と3人で面談の機会を設けたりすることもおすすめです。
 

素直に想いを伝える

面談では上司側も本音で想いを伝えることが重要です。辞めそうな部下に対して、「辞めないでほしい」「チームにとって必要な人材である」と素直な気持ちを伝えましょう。
 
具体的にどのような点を高く評価しているかを伝えるのも効果的です。部下自身が強みだと認識していない部分でも、上司が高く評価してくれていることが分かると「今のスキルを伸ばすことで、この会社でも成長できるのでは」「きちんと自分のことを見てくれている職場でこれからも働き続けたい」と、辞めそうになっていた気持ちが変わることがあります。
ただし、退職の決意が固い場合には引き留めが逆効果になり、会社の印象を下げることがあるため、執拗な慰留にならないよう注意が必要です。
 

まとめ

従業員の退職は、人材不足やコストの面で会社にとって大きな損失となります。部下が辞めそうなことを早期に把握し、悩みを一緒に解決したうえで、これからも働き続けてもらうことが最も望ましいでしょう。
 
どうしても辞めそうな部下を説得できない場合には、部下の選択を応援し円満退社になるよう努めることが重要です。そして、退職理由の本音を聴き、不満の原因を知って、他の従業員の退職の防止に活かしましょう。
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