コラム

2024.06.28
2024.06.28

人事評価で部下がやる気をなくす理由とは?やる気やモチベーションを高める方法を紹介

従業員のやる気を大きく左右する人事評価。人事評価の結果が給与のダイレクトに影響する企業も多いのではないでしょうか。
評価方法やフィードバックの伝え方次第では「評価が低いから頑張らない」と従業員のモチベーションが下がり、最悪の場合「評価に納得できないから辞める」と退職に至ることもあります。
そこで本記事では、人事評価でやる気やモチベーションを高めるポイントや、具体的な評価方法をご紹介します。
 

人事評価で部下がやる気をなくす理由

 
人事評価でやる気をなくす理由には、評価自体が低いこと以外にも、いくつかの理由があります。
 

基準が明確になっていない

仕事における評価は公平かつ客観的であることが求められますが、人事評価が明確でないと、評価者(上司)の主観に影響されやすくなります。上司との相性によって、良い評価を受けることもあれば、悪い評価を受けることもあるでしょう。
しかし本来、人事評価は評価者によって左右されるべきものではありません。基準を明確にして、客観的な評価を行なうことが重要です。
また、評価基準が明確でないと、部下自身の自己評価とのギャップも生まれやすくなります。自己評価よりも人事評価が低かった場合「頑張っても評価されない」と感じ、やる気を失ってしまいます。
 

目に見える成果・結果だけが評価されている

繰り返し行なっている業務であればそれほど難しくないかもしれませんが、企業として新たなチャレンジとなる仕事は、おのずと難易度は高くなります。思いもよらぬ壁があったり、社内で検討を重ねる中で頓挫してしまったりすることもあるでしょう。そのような前提条件やプロセスを考慮せず、結果だけで評価するのは不公平感を抱く原因になります。
また、営業部門であれば売上という指標がありますが、バックオフィスの部門だと成果や結果を数字で表すことが難しい場合もあります。目に見える成果だけを重視するのではなく、プロセスも鑑みた評価を行なうことが重要です。
 

上司からのフィードバックに納得がいっていない

自己評価と人事評価にギャップがある場合(特に低い場合)には、その評価に至った理由が不明瞭であると、部下は納得して受け入れることができません。頑張っても認められないとやる気を失い「普段の仕事ぶりを見ていないのではないか」と不信感を抱きかねません。
フィードバックの場は、部下が納得して評価を受け入れ、さらに成長のきっかけになるような気付きを得られる時間になるのが理想的です。そのためには、評価が低い事実だけを伝えるのではなく「その評価に至った理由」「今後部下に求めること」をセットで伝えましょう。
その評価に至った理由については「売上目標を達成できなかったから」といった結果だけではなく、「新規顧客を開拓するなど目標達成のための努力も見られなかったから」とプロセスに対してのフィードバックも伝えると良いでしょう。今後求めることに関しても、具体的な行動ベースで伝えると部下の理解度も深まります。
 

部下のやる気・モチベーションを高める方法

 
人事評価は伝え方を工夫することで、部下のやる気を引き出すきっかけにすることも可能です。ここからは、やる気を高める方法をご紹介します。
 

人事評価を明確にし社内で周知する

誰が見ても明確な評価基準を設定することで、評価者によって評価が左右されることを避けられます。自己評価とのギャップも小さくなり、部下も納得して受け入れることができるでしょう。
また、基準を明確にするのと同じくらい大切なのが、事前に基準を社内で周知しておくことです。どのような基準で評価されるかを事前に把握できていれば、上司からフィードバックを受ける際も心づもりができるだけでなく、普段から”評価につながる行動”を取ることができます。行動が評価につながることによってモチベーションもアップし、さらに前向きに仕事に励むという、良いサイクルが生まれるでしょう。
基準を周知する時には「なぜその基準を設定したのか」「企業のどのような理念・方針に基づいて設定したのか」もあわせて発信できると、より納得感が高まります。
 

信頼関係を構築する

日頃上司に対して不信感を抱いている場合は特に、評価が低いと「上司の主観で低い評価をされているのではないか」と感じてしまうことがあります。
一方、信頼できる上司からの評価であれば、たとえ厳しい評価であっても、成長するための気付きであると前向きに捉えることができます。
信頼関係は一朝一夕に構築できるものではないため、普段から部下の様子や仕事ぶりに意識的に目を配ったり、コミュニケーションを密に取ったりと、少しずつ関係を築いていくことが大切です。
さらに、フィードバックを伝える際にも注意が必要です。結果だけを淡々と伝えるのではなく、プロセスに対しても「あの取り組みは特に良かった」と上司自身の言葉で評価すると良いでしょう。褒められることでモチベーションが上がると同時に、普段から頑張りを見てくれているのだと実感でき、信頼感が高まります。
 

部下のやる気・モチベーションを高める評価制度

 
やる気を高める上でフィードバックの仕方はもちろん大切ですが、そもそもの評価制度が適切であることも重要です。
 

360度評価

360度評価とは、上司だけでなく、同僚や部下など幅広い人からの評価を参考にして最終的な評価を決定することです。
上司1人では、どうしても部下の仕事ぶりを完璧に把握することはできません。その点360度評価では、評価者が多いため多面的に評価を行なうことができ、公平で客観的な評価ができるというメリットがあります。また、日常の些細な取り組みや行動も評価につながるため、日々の仕事のモチベーションにもなります。
一方、評価経験の浅い若手の従業員が評価者となる場合には、適切な評価が難しいケースもあるため注意が必要です。評価基準に関する説明会や研修を行なう、評価者をリーダー以上の役職者に絞るなど工夫をしましょう。
 

目標管理制度(MBO評価)

目標管理制度(MBO評価)とは、企業の目標とリンクした目標を従業員一人ひとりが設定し、その達成度を評価する制度です。従業員は企業目標を達成するために自分ができることは何かを考え、自らの目標として掲げます。
企業全体で同じ方向を向けること、自分のスキルと向き合いながら自身の役割を主体的に考えられることが特長です。また、個人の目標が企業目標につながっているため、普段の仕事の中でも企業の一員として貢献している実感を持つことができます。
ただ、各々が目標設定を行なうため、当然ですが従業員によって目標が異なります。そのため人事評価の難易度がアップすることが難点です。事前に研修を行なったり、定量・定性両方の評価基準を設けたりと対策しておくと良いでしょう。
 

バリュー評価

バリュー評価とは、企業の理念や価値観をどのくらい体現できたかを評価する制度です。
企業のバリュー(行動指針)に沿った取り組み・行動を目標として設定し、その達成度が評価されます。そのため、従業員一人ひとりがおのずと行動指針に準じた行動を取るようになるといったメリットがあります。また、理念や価値観が浸透しやすく、”その企業らしさ”が強まるため、帰属意識も高まります。
その一方で、バリュー評価は定量評価が難しい傾向にあります。定性評価に偏ることで、評価に主観が入りやすくなってしまうことがデメリットです。なるべく客観性を保てるよう、360度評価と組み合わせ、主観が入りにくい仕組みづくりを行なうことがおすすめです。
 

コンピテンシー評価

企業の中で高い成果を上げている人には、共通する行動や価値観、思考のパターンがあります。逆に言えば、その行動や考え方を身に着けると、他の人もハイパフォーマーになれる可能性があるということです。
この考え方から生まれたのがコンピテンシー評価です。その企業のハイパフォーマーに共通する行動特性(コンピテンシー)を分析し、それらを言語化して人事評価の評価項目とします。評価項目である以上、従業員はそれを達成できるよう努めるため、自然とハイパフォーマーと同じ行動や考え方をするようになります。
コンピテンシー評価は評価項目が明確であるため、公平な評価ができること、従業員にとっても目指す姿が具体的になることがメリットです。
 

定量・定性評価

定量評価は、売上といった数値で表れる成果に対する評価のことで、客観的かつ公平な評価を行なえるのが特長です。部門によって定量評価が難しい場合には、「半期で業務改善を○件実施する」「残業事案を○時間以内におさめる」など、生産性の向上に軸を置いた数値を設定すると良いでしょう。
一方、定性評価は成果を出すまでの行動や業務に対する姿勢を評価します。「チームの一員として高い貢献が見られたが、数字で表せる結果にはつながらなかった」という場合にも、定性評価では適切な評価が可能です。
定量評価と定性評価は、いずれか一方では十分な評価を行なうことができません。両方を取り入れることで偏りのない評価となり、部下の納得感も高めることができます。
 

普段から部下のやる気を高めるための取り組み

 
人事評価は年に数回しかありませんが、部下のやる気を高めるには、普段の仕事の中で褒めたり、感謝を伝えたりすることも効果的です。近年、注目が高まっている取り組みを2つご紹介します。
 

サンクスカード導入

例えば仕事で助けてもらった時、何かアドバイスをもらった時など「ありがとう」の気持ちを伝えたい場面はあるでしょう。そのような時に、従業員同士が感謝の気持ちを送り合えるのがサンクスカードという仕組みです。口頭で伝えるだけではなく感謝の気持ちを形にすることで、より気持ちが伝わりやすくなります。受け取り手も「助けて良かった」「また力になりたい」という前向きな気持ちが生まれるため、ポジティブな組織文化を醸成します。
サンクスカードの形式は手書きのメッセージカードのほか、webサービスやアプリなど多種多様。中でも近年は、手軽に送れてコストも抑えられるデジタルのサンクスカードを導入する企業が増えています。
 

ピアボーナス制度の導入

ピアボーナス制度は、従業員同士がお互いの仕事に対して、感謝・称賛と少額の「報酬」を一緒に送り合う制度のこと。一緒に働く仲間から頑張りを評価してもらえること、少額であっても報酬を得られることで、仕事に対するモチベーションがアップします。また、人事評価という大きな枠組みでは評価されづらい、日々の小さな貢献も評価できます。
ピアボーナス制度によって称賛し合う文化が根付くと、職場の雰囲気が良くなるのはもちろん、従業員同士のコミュニケーションの活性化も期待できるでしょう。
 

まとめ

人事評価は本来、頑張りは適切に評価され、不足しているスキルについては成長のための気付きを得る場になるのが望ましいです。
「人事評価をきっかけに部下のやる気がなくなった」とお悩みの方は、制度やフィードバックの仕方を見直しつつも、職場全体として普段からモチベーションを上げる取り組みを検討されてはいかがでしょうか。
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