「最近、部下のやる気が感じられない」「どう声をかければよいのかわからない」と悩んでいる上司の方は少なくないでしょう。モチベーションは待遇や職場環境などさまざまな要因に左右されますが、なかでも身近な上司の影響は大きいものです。日々の関わり方を見直せば、部下のやる気を引き出すことは十分に可能です。
本記事では、部下のモチベーションが下がる理由や低下のサインを整理したうえで、モチベーションを上げる7つの方法、すぐに使える声かけの例、避けたいNG行動までを解説します。部下との関わり方に悩んでいる方は、ぜひ参考にしてください。

モチベーションとは、人が行動を起こすための「動機付け」を指す言葉です。モチベーションには、外発的動機付けと内発的動機付けの2種類があります。部下のモチベーションを管理するうえで、両者の違いは必ず押さえておきたいポイントです。
外発的動機付けとは、給与や賞与、昇格、評価といった外部からもたらされる報酬や、減給や罰則を避けたいという気持ちによる動機付けです。
昇格やボーナスアップといった外発的動機付けは誰にとってもわかりやすく、即効性があるのがメリットといえます。ただし、効果は一時的になりやすく、報酬がなくなると意欲も下がってしまう傾向があります。長期的にモチベーションを維持するには、外発的動機付けだけでは不十分でしょう。
内発的動機付けとは、好奇心や興味・関心、やりがい、成長の喜びなど、自分の内側から湧き上がる欲求による動機付けです。
内発的動機付けは、行動そのものによって欲求が満たされるため、報酬の有無にかかわらず長く持続します。本人が自ら考え、学び、行動するようになるため、周囲の想像を超える成長や成果も期待できるでしょう。
部下のモチベーションを維持するには、最初のきっかけは外発的動機付けであっても、最終的には内発的動機付けへ移行していくのが理想です。
部下が日々もっとも多く接する組織の代表は、直属の上司です。仕事の割り振りや評価、日常の声かけなど、上司の関わり方は部下の働きやすさややりがいに直結します。会社の制度を変えるのは簡単ではありませんが、上司の言動は今日からでも変えられるでしょう。
また、部下のモチベーションはチーム全体の成果にも影響を及ぼすものです。やる気のあるメンバーは自ら工夫して行動し、周囲にもよい刺激を与えます。反対に、一人のモチベーション低下を放置すると、チームの雰囲気が悪化したり、離職につながったりするおそれもあります。部下のモチベーションに目を配ることは、上司にとって重要な役割のひとつです。

モチベーションが下がる理由は人それぞれですが、一般的には次の7つが考えられます。原因によって有効な対策は変わるため、まずは部下がどの状態に当てはまりそうかを考えてみましょう。
「会社から正当に扱われていない」と感じると、誰でも働く意欲が下がってしまうものです。給与や福利厚生などへの不満は、そのまま上司や会社への不満につながります。過度な長時間労働やサービス残業、有給休暇を取得しにくい環境も、部下が不満を溜め込む原因になるでしょう。
職場の人間関係は、働くモチベーションを大きく左右します。どれだけ待遇がよくても、高圧的な上司や協力的でない同僚がいると、出社すること自体が憂うつになってしまうものです。
人間関係の問題は本人だけで解決するのが難しく、八方ふさがりの状態に陥ることもあります。人間関係の悪化をきっかけに、転職や休職を選ぶ人も少なくありません。
仕事における内発的動機付けは、自分の仕事へのやりがいによって刺激される場合が多いものです。反対に、会社の事業や担当業務に興味・関心を持てない状態では、モチベーションを高めるのは難しいでしょう。
上司は、日々の業務が顧客や社会、会社の成果にどうつながっているのかを伝え、部下が仕事に意義を感じられるよう働きかけることが大切です。
いくら頑張っても評価につながらない環境では、モチベーションが下がってしまいます。評価基準があいまいだったり、評価の理由が説明されなかったりする場合も、不満を溜め込む原因になるでしょう。
評価制度そのものを変えるのは容易ではありません。しかし、上司が評価の根拠を丁寧に説明し、具体的なフィードバックやアドバイスを行なえば、部下の納得感を高められます。
個人の許容量を超える業務を任されると、不安やプレッシャーから心身が疲弊してしまいます。どれだけ頑張っても仕事が終わらず、残業が続く状態では、仕事そのものを楽しめなくなるでしょう。場合によっては、心身の健康を損なうおそれもあります。
必要に応じてほかのメンバーにタスクを割り振る、能力や経験に応じた業務を任せるなど、業務量を適切に調整するのも上司の役割です。
組織のビジョンは、従業員が進む方向を示す道しるべです。会社の方向性が明確でないと、従業員は自分が何を目指し、どう行動すべきかがわからなくなってしまいます。
上司は、会社やチームの目標を自分の言葉でかみくだいて伝え、部下の仕事との結びつきを示しましょう。目指す先が見えると、日々の業務に前向きに取り組みやすくなります。
キャリアの見通しは、日々の仕事へのモチベーションに直結します。「ここで働いていても、思い描くキャリアは実現できない」と感じると、働く意欲は低下してしまうでしょう。
将来に対する漠然とした不安も、モチベーションを下げる原因になります。組織でキャリアを重ねてきた先輩として、部下の不安に耳を傾け、解消できるよう働きかけましょう。

部下のモチベーション低下は、本人が自ら打ち明けてくれるとは限りません。早めに気づいて対応できるよう、次のような変化がないか日頃から気を配りましょう。
以前はこまめに報告や相談をしていた部下からの連絡が減った場合、仕事への関心が薄れているサインかもしれません。上司に話しかけにくいと感じている、相談しても意味がないと思っているといった可能性も考えられます。報連相の頻度や内容の変化は、部下の状態を知る手がかりになるでしょう。
普段は丁寧に仕事を進める部下にケアレスミスや納期遅れが目立ち始めたら、集中力や意欲が低下しているのかもしれません。業務量の多さや、プライベートの悩みが影響している場合もあります。ミスを責める前に、背景に何があるのかを確かめることが大切です。
会議で意見を言わなくなった、表情が暗い、雑談に加わらなくなったといった変化も見逃せません。特にリモートワークでは様子が見えにくいため、オンライン会議での表情やチャットでの反応の変化にも目を向けましょう。
遅刻や早退、急な欠勤が増えるのは、モチベーションの低下だけでなく、心身の不調が隠れている可能性もあるサインです。気になる変化があれば、早めに声をかけて状況を確認しましょう。必要に応じて、人事部門や産業医など専門家と連携することも検討してください。

部下のモチベーション低下に気づいたら、思いつきで対処するのではなく、段階を踏んで対応するのが効果的です。ここでは、対応の流れを4つのステップで紹介します。
対応の第一歩は、部下の変化にいち早く気づくことです。前述のサインを参考に、普段の仕事ぶりや言動との違いに目を向けましょう。
そもそも普段の様子を知らなければ、変化にも気づけません。日常的な声かけや雑談を通じて、部下一人ひとりの普段の状態を把握しておくことが大切です。
変化に気づいたら、1on1ミーティングなどで1対1で話す時間を設けます。最初から問題を指摘するのではなく、「最近どう?」「困っていることはない?」など、本人が話しやすい問いかけから始めましょう。
話を聞く際は、途中で遮ったり否定したりせず、相手の気持ちに共感しながら耳を傾ける「傾聴」を意識します。本音を話してもらうには、「この人なら話しても大丈夫」という安心感が欠かせません。
話の内容から、モチベーションが下がった原因を見極めます。業務量が多すぎるならタスクの配分を見直し、キャリアに不安があるなら今後の成長の道筋を一緒に考えるなど、原因に合った対策を選びましょう。
対策は上司が一方的に決めるのではなく、部下と話し合って決めるのがポイントです。自分の意見が反映された対策であれば、部下も前向きに取り組めるでしょう。
対策を実行したら、一定期間後に再び1on1の場を設け、状況が改善しているかを確認します。改善が見られない場合は、原因の捉え方や対策の内容を見直しましょう。
モチベーションは一度上がっても、環境の変化などで再び下がることがあります。問題が解決した後も、定期的に声をかけてフォローを続けることが大切です。

部下のモチベーションを高めるには、上司からの働きかけが欠かせません。ここでは、日々のマネジメントに取り入れたい7つの方法を紹介します。
「今の仕事が自分の成長や将来につながっている」と実感できれば、モチベーションは自然と高まります。部下のキャリア支援で大切なのは、本人が何を大切にし、将来どうなりたいのかを理解することです。
仕事のやりがいや働く目的、プライベートとの両立など、価値観は一人ひとり異なります。面談などで将来像を共有し、そこに近づくための経験や学びの機会を一緒に考えましょう。
人は褒められると自己効力感が高まり、仕事への意欲も向上します。褒める対象は、数値で表せる成果だけではありません。
評価には、目標達成率や受注件数など数値化できる要素を見る「定量的評価」と、協調性や創意工夫など数値化しにくい要素を見る「定性的評価」があります。部下の頑張りを正しく認めるには、両方の視点をバランスよく持つことが重要です。普段から部下の仕事ぶりを観察し、成果を上げたときにはしっかり褒めましょう。
部下を褒める際は、次のポイントを押さえると効果的です。
フィードバックには、長所や成果を伝える「ポジティブフィードバック」と、問題点や改善点を伝える「ネガティブフィードバック」の2種類があります。
ポジティブフィードバックは部下の承認欲求を満たし、成長の実感を促します。「できるようになった」という実感が得られると、仕事への意識やモチベーションは大きく変わるものです。あわせて次に目指す小さな目標を示せば、段階的に成功体験を積み重ねられます。
ただし、ネガティブフィードバックが不要というわけではありません。両方を織り交ぜながら、できていることと課題を明確にすれば、部下の成長を効果的に促せるでしょう。
部下のモチベーションを高めるには、まず相手をよく知ることが大切です。上司からフィードバックを伝えるだけでなく、1on1ミーティングなど、定期的に部下の話を聞く場を設けましょう。現状への不満や希望、将来の目標などに耳を傾けると、一人ひとりに合った関わり方が見えてきます。
内発的動機付けは外から働きかけにくいものですが、対話を重ねると、部下が何にやりがいを感じるのかを把握しやすくなります。たとえば「お客様からの感謝が励みになる」とわかれば、顧客からの評価を本人に伝えるといった効果的なアプローチが可能です。
「この上司は自分の話を聞いてくれる」という安心感は、上司への信頼にもつながるでしょう。
目標は、上司が一方的に与えるよりも、部下と話し合って決めたほうが納得感が高まります。自分で決めた目標であれば、達成に向けて主体的に取り組みやすくなるでしょう。
目標の難易度は、少し努力すれば届く程度が理想です。高すぎる目標は挫折感につながり、低すぎる目標は達成しても成長を実感できません。期限や達成の基準を具体的に決め、進捗を定期的に一緒に確認しましょう。
仕事の進め方を自分で決められる裁量があると、部下は責任感とやりがいを感じやすくなります。上司が細部まで指示するのではなく、目的やゴールを共有したうえで、やり方は部下に任せてみましょう。
任せる仕事は、今の実力より少し難しいものを選ぶのがポイントです。挑戦を乗り越えた経験は、大きな自信と成長実感につながります。ただし、任せきりにせず、困ったときに相談できる体制を整えておくことも忘れないでください。
失敗するたびに厳しく責められる環境では、部下は無難な行動しかとらなくなります。新しいことに挑戦する意欲を引き出すには、失敗を学びの機会として受け止める姿勢が大切です。
部下が失敗したときは、感情的に責めるのではなく、原因と次の対策を一緒に考えましょう。上司自身が過去の失敗談を話したり、挑戦したこと自体を評価したりすると、部下は安心して行動できるようになります。意見や質問を気軽に言える雰囲気づくりも、上司の大切な役割です。

日々の何気ない声かけも、部下のモチベーションに大きく影響します。ここでは、場面別に使いやすい声かけの例をまとめました。例をそのまま使うのではなく、自分らしい表現に置き換えて伝えてみてください。
感謝の言葉は、自分の仕事が誰かの役に立っているという実感を部下に与えます。「ありがとう」に、何に対する感謝なのかを添えるのがポイントです。
結果だけでなく、そこに至るまでの努力や工夫に目を向けた声かけは、部下の自信につながります。以前と比べて成長した点を具体的に伝えると効果的です。
上司から信頼されていると感じると、部下は「期待に応えたい」と前向きな気持ちになります。プレッシャーを与えすぎないよう、任せる理由とあわせて伝えましょう。
部下が悩みを抱え込まないよう、上司から話しかけるきっかけをつくることも大切です。忙しそうにしているときほど、意識して声をかけましょう。

上司の言動は、良くも悪くも部下のモチベーションを大きく左右します。よかれと思った行動が、かえって部下のやる気を下げている場合もあるでしょう。ここでは、特に注意したいNG行動を紹介します。
感情に任せて怒ると、部下は何を改善すべきかがわからず、萎縮してしまいます。ほかのメンバーの前で叱責すれば、部下の自尊心を傷つけ、上司への信頼も失われかねません。注意が必要な場面では1対1で、事実と改善してほしい行動を具体的に伝えましょう。
仕事の進め方を細部まで指示したり、頻繁に進捗を確認したりする管理は、マイクロマネジメントと呼ばれます。上司に信頼されていないと感じた部下は、自分で考える意欲を失ってしまうでしょう。部下の経験やスキルに応じて、任せる範囲を少しずつ広げていくことが大切です。
特定の部下だけをひいきしたり、相手によって評価の基準を変えたりすると、ほかのメンバーは「頑張っても報われない」と感じてしまいます。不公平な扱いは、チーム全体の士気を下げる原因です。仕事の割り振りや評価、声かけの頻度に偏りがないか、定期的に自分の行動を振り返りましょう。

部下のモチベーションを高めようとしても、関わり方を誤ると逆効果になる場合があります。モチベーションを管理する際は、次のポイントを押さえておきましょう。
フィードバックは、できるだけその場ですぐに伝えるのが鉄則です。時間がたつとお互いの記憶があいまいになり、学びにつながりにくくなってしまいます。
伝える際は、相手が受け取りやすい表現を選ぶことも大切です。どのような行動が望ましいのか、どう改善すればよいのかを、理由や背景も含めて具体的に伝えましょう。
内発的動機付けが高まるきっかけは、一人ひとり異なります。「やりがいのある仕事を任されたい」人もいれば、「周囲から認められるとうれしい」「自分のペースで着実に進めたい」と考える人もいるでしょう。
部下の性格や価値観を考えずに画一的な対応をすると、かえってモチベーションを下げるおそれがあります。普段から一人ひとりと向き合い、それぞれに合ったアプローチを選びましょう。
上司には、一段上の視点からチームを導く役割があります。同時に、現場の目線に立ち、部下が抱える課題を一緒に解決していく姿勢も欠かせません。
「上司が一緒に考えてくれる」という安心感は、部下のモチベーションを支える力になります。ときには指示を出す司令塔ではなく伴走者として、課題解決やスキルアップをサポートしましょう。
部下のモチベーションを上げるには、一人ひとりに合わせたアプローチが必要です。しかし、経験や勘だけに頼った関わり方には限界があります。
モチベーション研修などを活用すれば、上司・管理職が部下のモチベーションを管理するための手法を体系的に学べます。
最後に、部下のモチベーションについてよく寄せられる質問に回答します。
まずは「やる気がない」と決めつけず、本人の話を聞くことから始めましょう。やる気がないように見える背景には、業務量の多さや人間関係の悩み、心身の不調などが隠れている場合があります。「もっとやる気を出して」と精神論で励ますのではなく、原因を一緒に探る姿勢が大切です。
年上の部下には、これまでの経験や知識に敬意を払った接し方を心がけましょう。指示を出す場面でも丁寧な言葉遣いを意識し、意見やアドバイスを求めると、本人の経験を活かす機会になります。若手の育成やチームの相談役など、経験を活かせる役割を任せるのも効果的です。
根拠のない褒め言葉を繰り返すと、言葉の重みが失われ、部下に「本心ではない」と受け取られるおそれがあります。大切なのは、褒める回数ではなく、具体的な行動や成果を挙げて伝えることです。また、モチベーションだけに頼らず、業務の進め方や役割分担などの仕組みを整えることも、部下が力を発揮しやすい環境づくりにつながります。

部下のモチベーションを高めるには、日々の小さな貢献を見逃さずに認めることが大切です。とはいえ、上司一人がメンバー全員の頑張りを把握し、毎回言葉にするのは簡単ではありません。
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部下のモチベーションは、待遇や人間関係、評価、キャリアへの不安など、さまざまな要因によって下がります。上司は日頃から部下の変化に気を配り、低下のサインに気づいたら、話を聞いて原因に合った対策をとることが大切です。
モチベーションを高めるには、キャリア支援や褒めること、フィードバック、傾聴、目標設定、仕事の任せ方、挑戦しやすい環境づくりなど、日々の関わり方が重要になります。感情的な叱責や不公平な扱いといったNG行動を避け、一人ひとりに合った方法で内発的動機付けを引き出しましょう。
部下を認め、感謝を伝える文化をチーム全体に広げたいとお考えなら、RECOGの活用もぜひご検討ください。
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