離職率とは、一定期間内に発生した離職者の割合を指します。
厚生労働省の資料では「常用労働者数に対する離職者数の割合」と定義しているため、分母を「在籍している従業員数」、分子を「離職した従業員数」として計算するのが一般的です。しかし、「新卒採用した従業員」「中途採用した従業員」「入社3年以内」などの条件での計算もでき、さまざまな切り口から離職率を求めることが可能です。
厚生労働省による離職率の計算方法は、以下の通りです。
離職率=離職者÷1月1日現在の常用労働者数×100% |
たとえば、1月1日時点で常用労働者数が100名の会社において、年間5名の離職者が発生した場合、「5÷100×100=5%」となり、離職率は5%です。
自社の離職率を計算した際、「高いのか低いのかわからない」という人も多いかもしれません。では、日本の平均離職率はどの程度なのか見ていきましょう。
厚生労働省による「令和5年雇用動向調査結果の概況」では、以下のように離職率が推移しています。
この数値から、たとえば100名の会社だと年間15名前後の離職者が発生していると考えられるでしょう。
また、2023年の離職率を条件別に見ていくと、以下のような数値になります。
ただし、この数値は全産業を合わせているため、産業別(業種別)で見てみると結果が異なります。
日本では、業種によって離職率が大きく異なります。ここでは、「令和5年雇用動向調査結果の概況」をもとに離職率の高い業種をランキング形式で紹介していきます。
1位 | 生活関連サービス業・娯楽業 | 28.1% |
2位 | 宿泊業 ・飲食サービス業 | 26.6% |
3位 | サービス業(他に分類されないもの) | 23.1% |
4位 | 不動産業・物品賃貸業 | 16.3% |
5位 | 教育・学習支援業 | 14.8% |
6位 | 医療・福祉 | 14.6% |
7位 | 卸売業・小売業 | 14.1% |
8位 | 情報通信業 | 12.8% |
9位 | 学術研究・専門・技術サービス業 | 11.5% |
10位 | 金融業・保険業 | 10.5% |
最も離職率が高いのは「生活関連サービス業・娯楽業」で28.1%でした。
生活関連サービス業・娯楽業とは、主に個人の日常生活に関連した技能・技術・施設を提供するサービス業と、余暇利用に関連した技能・技術・施設を提供するサービスを行なう事業所などが該当します。具体的には、以下のような業種が挙げられます。
なお、前年(令和4年)の調査では離職率が18.7%だったため、1年間で離職率が10ポイントも高くなっており、大きく変化した業種だといえます。
第2位は「宿泊業 ・飲食サービス業」の26.6%でした。前年調査では離職率は26.8%となっており、大きな変化は見られません。
宿泊業 ・飲食サービス業は、以下のような業種を含みます。
3番目に離職率が高いのは「サービス業(他に分類されないもの)」で、23.1%となっています。この業種は、以下のような事業所が該当しています。
次点は「不動産業・物品賃貸業」で、離職率は16.3%でした。不動産業・物品賃貸業の一例は、以下の通りです。
次は「教育・学習支援業」が14.8%でした。学校教育を行なう事業所、学校教育の支援活動を行なう事業所、学校教育の補習教育や組織的な教育活動を行なう事業所などが当てはまります。たとえば、以下のような業種です。
6位は「医療・福祉」で、14.6%でした。医療・福祉の業種は、医療、保健衛生、社会保険、社会福祉、介護に関するサービスを提供する、以下のような事業所が該当します。
次に離職率が高いのは、14.1%で「卸売業・小売業」でした。有体的商品を購入して販売する事業所が分類され、実店舗がある百貨店やスーパーマーケットのほか、通信販売も含まれています。
次は、「情報通信業」12.8%でした。情報の伝達・処理・提供を行なう事業所や、インターネットに付随したサービスを提供する事業所を指します。具体的には、以下のような業種です。
9位になったのは、離職率11.5%だった「学術研究・専門・技術サービス業」でした。具体的には、以下のような業種になります。
10位は「金融業・保険業」の10.5%でした。金融業や保険業を営む事業所のことを指し、以下のような業種が分類されています。
日本の離職率は約15%ですが、業種によって大きく差があることがわかりました。では、なぜ離職率が高くなるのでしょうか。離職率が高い業界・企業に共通する特徴を見ていきましょう。
離職率が高い業界では、給与に不満を感じている従業員が少なくありません。仕事に対するモチベーションが上がる要素は「やりがい」や「職場環境」など多岐にわたりますが、「給与」も重要な要素です。長時間働いているのに給与が低かったり、適切な手当やボーナスがもらえなかったりすると、従業員の不満につながります。
また、人事評価制度が整っておらず、自身の能力や成果を正当に評価されないケースも、離職につながりやすい原因になります。上司との関係性が良い人だけ評価されたり、評価基準が不透明だったりすると、従業員の不平・不満が生まれて離職率が高くなっていくでしょう。
そのため、そもそもの給与を上げるだけでなく、正当な人事評価制度を整えることも離職防止に効果的です。
離職率が高い背景には、従業員のワークライフバランスが原因となっているケースも見受けられます。
残業が多く労働時間が長引いてしまうと、当然ながらプライベートの時間が削られてしまいます。また、人手不足のために休日出勤せざるをえない状況だと、十分な休息を取れません。その結果、心身ともに疲弊してしまう従業員や、趣味の時間や家族との時間を取れずに不満を抱く従業員が増えていき、離職率が向上していきます。
長時間労働の是正は当然ながら、割り振っている業務量・業務内容は適切か、チームでフォローし合えているか、など根本的な部分から見直す必要があるでしょう。
教育体制の不備も、離職率が高い企業の特徴です。
特に新入社員は、慣れない環境で仕事をしなければいけないため、不安が大きい状態です。それにも関わらず、十分な教育やフォローがないと、「誰に聞けばよいのかわからない」「何をしたらよいのかわからない」という状況になり、さらに不安が倍増するでしょう。そのような中でパフォーマンスを出すのは当然難しく、自分に自信が持てなくなり離職につながってしまうのです。
また、新入社員だけでなく、なかなか成果が出ない従業員に対する教育も同様のことが言えます。成果が出ないからと言ってただ叱るだけでは、モチベーションが保てなくなり離職を招きかねません。ベテラン従業員のノウハウを共有し、成功パターンに則った業務フローを構築して、全員が成果を出せる仕組みづくりが求められます。
離職率が高いと、以下のようなデメリットが起きやすくなります。
離職者が出るたびに新たに人材の採用・教育が必要となるため、膨大なコストがかかります。
採用コストは、新卒採用・中途採用ともに一人あたり90~100万円程度かかると言われています。次々と離職が発生すると、その穴を埋めるために新たな人材を採用しなければならず、膨大な採用コストが発生することになるでしょう。
また、人材を採用したら教育しなければなりません。研修・セミナー受講費、書籍代、資格試験の受験料のほか、新人教育に携わる先輩従業員の人件費も教育コストをいえます。
このように、離職率が高いと採用・教育に莫大なコストが発生するうえに、コストをかけたにも関わらず従業員がすぐに辞めてしまうと投資分が無駄になってしまい企業としてマイナスになるでしょう。
離職率が高くなると社内にノウハウが溜まらないため、従業員がスキルアップできず十分なパフォーマンスを発揮できません。結果として、従業員が「この会社のために頑張りたい」と思えなくなり、さらなる離職を発生させるという悪循環を生み出します。
また、離職率が高いと慢性的な人手不足になり、一人ひとりの業務量が増えて負担が大きくなります。そのため、ミスやトラブルを招いたり、心身の疲労につながったりするなど、ネガティブな影響が出てくるでしょう。そのような企業だと、従業員のエンゲージメントが低くなるのは仕方のないことだといえます。
企業の離職率は、ハローワークや企業情報誌、口コミサイトなどで調べられます。就職活動・転職活動をしている求職者が「この企業が気になる」と思って離職率を調べてみたら高い数値だった場合、「職場環境が悪い」「給与が低い」などネガティブなイメージを持ってしまい、就職・転職の意欲がなくなってしまうでしょう。
また、高い離職率は、投資家にもマイナスイメージを持たれます。「人材が定着しない企業は今後の成長が見込めない」と判断され、投資対象にならないという懸念があります。
離職率が高い場合、どのように下げたらよいのか気になる人も多いのではないでしょうか。離職率を下げるための4つの施策をお伝えします。
人事評価制度の見直しは、離職率を下げるのに効果的です。
昔ながらの評価制度を続けていたり、主観的な評価になりがちだったりする場合、従業員は「いくら頑張っても評価してもらえない」という気持ちになり離職につながります。そのため、明確で客観的な評価基準を設けるだけでも、従業員の納得感は違うでしょう。
また、以下のような評価制度を取り入れる方法もあります。
納得感のある評価制度にすることで、従業員のモチベーションが向上し離職を防止する効果が期待できます。
人材育成を行ない、従業員に「もっとこの会社で成長したい」という意欲を持たせることも重要です。教育制度を見直して、新人教育の方法や、成果が出ないときのフォロー体制を整えましょう。
また、会社側の目標・希望と従業員本人のキャリアプランがマッチしていなかったり、明確なキャリアプランが描けなかったりする場合にも、モチベーションの低下を招きます。従業員がどのようなキャリアを築きたいのか明確にしたうえで、会社側がキャリアアップを支援する仕組みを整えて、本人の将来を支援する必要があります。
ワークライフバランスの実現も、従業員のエンゲージメントを高めて離職率低下につながります。
家庭の事情や自身の病気・ケガなどが理由で、オフィスで働くのが難しいという人も少なくありません。そのため、リモートワークやフレックスタイム制度、短時間勤務などを導入し、あらゆる人が能力を発揮できる環境を整えましょう。
多様な働き方の導入は、従業員のワークライフバランスを実現するため、従業員のモチベーションやパフォーマンスが高まり会社の生産性向上にもつながります。
職場の人間関係やコミュニケーション不足などが原因で離職を選択する人もいるため、職場環境の改善は企業にとって危急の課題です。
「業務の疑問を誰に聞いたらよいのかわからない」「仕事の悩みを相談できる相手がいない」という状態だと、仕事に対する不平・不満が募ってしまいます。また、自分からコミュニケーションを取りにいくのが苦手な人は、社内に居場所を見つけられず疎外感を抱いてしまうでしょう。
コミュニケーション活性化にはワークショップやランチミーティングなどの方法がありますが、まずは気軽にコミュニケーションを取れるよう、社内SNSや社内掲示板、ビジネスチャットツールなどを導入してみるのも一つの手です。
チームワークアプリ「RECOG(レコグ)」は、感謝の気持ちを伝えられるサンクスカードを贈れるレター機能や、社内の情報共有を促進する投稿機能などを搭載したツールです。RECOG上でノウハウ共有や悩み相談などを行ない、社内SNSとして活用している企業も多くいらっしゃいます。
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RECOGは以下の機能が搭載されています。
このほかにも組織を活性化できるこだわりが詰まっているので、詳細につきましては以下の資料をご確認ください。
離職率は業種によって違いが見られますが、特にサービス業や宿泊・飲食といった分野の離職率が高いことがわかりました。しかし、離職率が高いからといって諦める必要はありません。評価制度や職場環境の見直しなどで離職率の改善が図れる可能性があります。
今回紹介した内容を参考に、離職を防止する施策を打ち出していきましょう。当社では、チームワークアプリ「RECOG」を活用した離職率改善のアドバイスもしておりますので、気になる方はぜひ一度お問い合わせください。