カフェテリアプランとは「選択型福利厚生制」のことで、複数用意された福利厚生メニューの中から、従業員がカフェテリアポイントを使って好きなメニューを選んで利用できる制度のことです。
在宅補助や食事補助などと従来のように使い道が固定された福利厚生ではなく、自分のニーズに合わせた使い方ができることから、カフェテリアプランを導入する企業が増えつつあります。
本記事では、カフェテリアプランのメリット・デメリット、課税対象になる条件、導入時のポイントなどを解説します。
カフェテリアプランとは?
カフェテリアプランとは、企業が用意した福利厚生メニューの中から、従業員が好きな福利厚生を選べる仕組みのことです。企業は従業員に一定額の補助金をポイントとして付与し、従業員はそのポイントの範囲内で必要な福利厚生メニューを利用します。カフェテリアは「自分の好きなメニューを選ぶ」という意味を持つ言葉で、カフェテリアプランの由来になっています。
従来の福利厚生は画一的で、全従業員に同じ内容が与えられていました。そのため、従業員は福利厚生を「利用する・しない」を選択するのみでしたが、カフェテリアプランでは「どのメニューを選ぶか決める」ことが可能です。家賃補助や財形貯蓄、健診補助、育児・介護関連支援、キャリア支援など、カフェテリアプランで幅広いメニューを用意することにより、従業員は自身のライフスタイルやニーズに沿って福利厚生の使い方を選べます。
また、ポイントは従業員に一律で付与されるため、公平性を保ったまま従業員の満足度を向上できることもカフェテリアプランの利点です。
カフェテリアプランが注目される理由
カフェテリアプランは1980年頃にアメリカで誕生した制度です。日本では1990年代に初めて導入され、その後カフェテリアプランは大企業を中心に広まっていきました。
近年はライフスタイルや価値観が多様になり、在宅勤務や育児・介護と仕事の両立など、それぞれの働き方を尊重する風潮が強くなっています。そのような時代の変化に伴い、福利厚生のあり方も「全従業員に同じものを」から「個々の従業員に合ったものを」に変わり、一人ひとりのニーズに応えられるカフェテリアプランの注目度が高まっています。
カフェテリアプランは課税・非課税どちらになるのか?
福利厚生と聞くと、非課税のイメージを持つ方もいらっしゃるかもしれませんが、従業員が選ぶメニューによって課税対象になるため注意が必要です。カフェテリアプランのメニューには、課税対象と非課税のサービスが混在しているため、各メニューの課税条件を事前に確認しておきましょう。
カフェテリアプランのメニューが非課税となるには「換金性がないこと」「条件を満たせば全従業員が同じ待遇を受けられること」の2つが大きなポイントです。
具体的な例を挙げると、健康診断や人間ドック、予防接種をはじめとした医療関連サービス、そして業務に必要な講座受講費などは、カフェテリアプランの中で非課税となります。
また食事補助は「食事代の50%以上を従業員自身が負担していること」「1か月あたりの補助額が3,500円(税別)以下であること」の2点を満たすことも非課税の条件です。
逆に、カフェテリアプランのメニューで課税対象となるのは「換金性がある」「全従業員が同じ待遇を受けられない」ときです。
例えば、カフェテリアプランのポイントを現金や商品券、映画やスポーツ観戦チケットなどに交換する場合は「換金性がある」として課税対象になります。
また、旅行費用やレジャー用品等の購入代は、カフェテリアプランのこのメニューを利用した従業員のみが享受できる、つまり「全従業員が同じ待遇を受けられない」と判断されます。同時に、個人が負担すべき費用をカフェテリアプランで企業が補填しているとみなされ、課税対象となるため注意しましょう。
さらに、役職に応じて付与されるポイントが異なる場合も「全従業員が同じ待遇を受けられない」として、課税対象となります。
自社のニーズに合ったカフェテリアプランを検討する中で、課税・非課税の判断に迷う場面もあるでしょう。その際は、国税庁のホームページや最寄りの税務署に相談すると安心です。
また利用後のトラブルを避けるために、従業員に対して、カフェテリアプランには課税・非課税のメニューが混在していること、どのメニューが課税対象となるかを明確に発信することが大切です。
カフェテリアプランのメリット
カフェテリアプランは、一人ひとりのニーズに応えられることから、従業員満足度や企業イメージの向上、管理負担の軽減などのメリットをもたらします。
従業員満足度が向上する
従業員にとってカフェテリアプランの最大のメリットは、自分のニーズに合わせて福利厚生を選択できることです。
画一的な福利厚生の場合、家賃補助や育児・介護支援などは利用者が限定されており、利用できない人にとっては不公平感を抱く原因になります。
その点カフェテリアプランは、ポイントの範囲内で自分の好きなメニューを選べるため、従業員全員が必ず何かしらの福利厚生を利用できるのがメリットです。
また、一方的に福利厚生を与えられるのではなく、自ら選べるというカフェテリアプランの特長も従業員満足度をアップさせます。
福利厚生費の管理負担を軽減できる
画一的な福利厚生の場合、用意する福利厚生に対して全従業員分のコストがかかる、または利用率を予測して予算を決めるなどの管理が発生します。利用状況によっては、まったく利用されずコストが無駄になることも、逆に予算を上回るリスクもあります。
一方で、カフェテリアプランは、全従業員に一律のポイントを付与するため「一定額の補助金(ポイント)×従業員数」が予算上限です。この上限を上回る心配がないため、カフェテリアプランは予算管理の負担を軽減し、実態に則した予算策定を可能にします。
企業イメージの向上につながる
福利厚生は一種の報酬であると同時に、従業員が安心して働ける環境を作る役割があります。仕事に集中するために必要なサポートは、育児や介護、キャリア支援、家賃補助など人によってさまざまです。個々のライフスタイルやニーズに合った福利厚生を用意することは、従業員一人ひとりを大切にする姿勢の表れであるため、カフェテリアプランは企業イメージの向上に寄与します。
また、就職や転職時に福利厚生を重視して企業を選ぶ人も多いため、人材採用の際はカフェテリアプランがアドバンテージとなり、優秀な人材の確保も期待できるでしょう。
カフェテリアプランのデメリット
メリットの多いカフェテリアプランですが、運用コストがかかる、課税・非課税対象のメニューが混在し、管理が煩雑になるデメリットもあります。
運用コストがかかる
自前でカフェテリアプランを運用すると、複数の福利厚生を用意する分コストは膨れ上がり、ポイント管理の負担も大きくなります。福利厚生代行サービスでカフェテリアプランを利用すれば負担は軽減できますが、利用料金が発生し運用コストがかかります。
また、未消化のポイントを次年度に繰り越さない「単年度精算方式」を採用する場合には、従業員から不満が出る可能性もあります。ルールや注意点を従業員に説明する手間がかかるのも、カフェテリアプランのデメリットの1つです。
課税・非課税が混在している
カフェテリアプランの福利厚生メニューの中には、課税対象・非課税対象のものが混在しています。トラブルにならないよう「ポイントを現金や商品券、チケットなどに利用する場合には課税対象になる」という仕組みを従業員に説明し、カフェテリアプランの注意点を十分に周知させる必要があります。
さらに、経理上の管理も煩雑になる場合があるため、カフェテリアプラン導入前には、経理部との合意やシステム整備も重要です。
カフェテリアプラを導入する際に注意すること6つ
カフェテリアプランを成功させるためには、ニーズ調査やルール設定など事前の準備がポイントになります。
目的の明確化
カフェテリアプランの魅力は、福利厚生の充実によって従業員の多様なニーズに応えられることです。しかし、導入目的が明確でなければ従業員のニーズに応えることがゴールになってしまい、予算やメニュー数は際限なく膨れ上がります。
従業員自身が自分に必要な福利厚生をカフェテリアプランで選ぶことで「従業員満足度や企業イメージの向上」「コスト管理負担の軽減」はもちろん、「エンゲージメントの向上」「離職率の低減」なども期待できます。カフェテリアプランによって目指したい組織のあり方が定まっていれば、予算規模の指標が見え、メニューの取捨選択も可能になるでしょう。
ニーズの調査
子育て世帯であれば育児支援が嬉しいように、従業員の年代や家族構成、ライフスタイルによって、カフェテリアプランにどのようなメニューを求めるかはさまざまです。また、職種によっても異なる場合があります。例えば、社員食堂や弁当支給など食事補助は人気の福利厚生ですが、営業職をはじめ外出の多い職種は利用できる機会が少なく、不満を抱く人もいます。
カフェテリアプランで従業員満足度を向上させ、不公平感を生じさせないために、従業員がどのような福利厚生を求めているのか生の声を聞くと良いでしょう。アンケートやヒアリングで出た意見をもとにメニューを設計すると、従業員のニーズに沿ったカフェテリアプランが実現できます。
予算設定
各従業員に割り当てる予算を設定し、予算内で従業員がカフェテリアプランのメニューを自由に選べるように設計します。その際、策定した福利厚生費の予算を超えないように注意しましょう。
一般社団法人日本経済団体連合会の調査※によると、カフェテリアプランの1人あたりの費用は1か月平均4,660円で、単純計算すると年間約6万円が従業員1人あたりの予算となります。
カフェテリアプランの予算が高すぎても経営を圧迫しますが、低すぎても従業員が利用したいと思えるメニューを用意するのが難しくなります。ニーズ調査の結果と目的を考慮しながら、自社の状況に合った金額を設定しましょう。
※出典:一般社団法人日本経済団体連合会「第64回 福利厚生費調査結果報告」(2020年12月18日)より
社内ルールの策定
前述のとおり、カフェテリアプランは課税対象と非課税対象のメニューが混在する、少し複雑な制度です。また、未消化のポイントを次年度に繰り越せるか否かは企業の方針によって異なります。
従業員の誰もが気軽にカフェテリアプランを利用できるよう、ルールは簡単・簡潔に設定するのがポイントです。
また提供するメニューや利用条件、申請方法を明確にすることで、従業員がカフェテリアプランをスムーズに利用できる状態を整えておくことも大切です。利用条件や申請方法がメニューによって異なる場合は、情報を冊子や資料にまとめ、従業員が必要な時に見返せるようにしましょう。
導入の周知
カフェテリアプラン導入の際は、従業員に対して仕組みやルールをしっかり説明しましょう。カフェテリアプランは、自分が利用する福利厚生を自分で選び、管理する制度であるため、従業員が十分に内容を理解し、活用できる状態にする必要があります。
朝礼や動画などを利用した口頭での説明と、資料配布や社内掲示板といったテキストベースの説明を両方用いると、従業員の理解を深められるでしょう。
カフェテリアプラン導入後は、問い合わせの多い質問に関しては配布資料を更新する、社内掲示板にQ&Aとして掲載するなどの対応がおすすめです。従業員が迷わずカフェテリアプランを利用できる状態を整備できると同時に、問い合わせ対応の業務軽減につながります。
定期的な見直し
従業員のニーズや社内の状況、働き方は時代とともに変化するため、カフェテリアプランの福利厚生メニューも定期的に見直す必要があります。
ニーズが低くなったメニューは中止し、新たにニーズが高まっているメニューを導入するなど、必要に応じてカフェテリアプランのラインナップを更新しましょう。
ニーズの変化を的確にとらえるため、定期的に従業員にアンケートを実施するのも効果的です。カフェテリアプランのメニューごとの利用率は定量データで可視化できますが、ニーズ変化の背景までは把握できません。アンケートで直に従業員の価値観やニーズを知ることで、現状に適したカフェテリアプランを維持できます。
まとめ
カフェテリアプランは、従業員が自分のニーズに合わせて福利厚生を選べる「選択型福利厚生制度」です。一人ひとりライフスタイルや働き方、価値観が異なる中で、画一的な福利厚生ではカバーしきれない個々のニーズに応えることが可能です。
カフェテリアプランで自分に合った福利厚生を享受できることで、福利厚生を有効活用でき、従業員満足度が高まる他、企業に対するエンゲージメント向上や離職防止も期待できます。