コラム

なぜ愛社精神を育む必要があるのか?その理由やエンゲージメントとの違い、高める方法を紹介

なぜ愛社精神を育む必要があるのか?その理由やエンゲージメントとの違い、高める方法を紹介

公開日: 2024.01.30
更新日: 2024.01.30

「若手の従業員は入社してもすぐに辞めてしまう」そんな課題を抱えている企業は多いのではないでしょうか。
 
離職率を下げるため採用活動を見直したり、労働環境を改善したりと試行錯誤する企業の方に、ぜひご注目いただきたいのが「愛社精神」です。
愛社精神をもたない若者が増えていると言われますが、企業にとっては愛社精神の強い人が増えることで帰属意識が高まり、離職率が低くなるというメリットがあります。
 
本記事では愛社精神とエンゲージメントの違い、愛社精神を育む方法などをご紹介します。
 

愛社精神とは?

 
愛社精神とは、自分が働いている企業を愛する気持ちのこと。従業員が企業を愛し、誇りに思っている状態を「愛社精神がある」「愛社精神が強い」といいます。
終身雇用制や年功序列が影を潜め、転職が当たり前となった今日。愛社精神が育ちにくい環境であると同時に、その是非も見直されつつあります。しかし、愛社精神によって組織の生産性が向上したり、従業員の離職を避けられたりとメリットが多いのも事実です。
 

愛社精神とエンゲージメントの違い

 
愛社精神とは、前述のとおり「自分が働いている企業を愛する気持ち」のこと。いわば、従業員から企業への一方通行な想いです。
一方、似て非なる言葉であるエンゲージメントは、「自分が働いている企業に貢献したいという自発的な意欲」を指します。企業に貢献した成果が、従業員に何らかの形で返ってくる。これにより、従業員のモチベーションが高まり、さらなる貢献意欲が生まれるという、双方向で高め合っていくものです。
 

なぜ愛社精神を育む必要があるのか?

 
愛社精神を育む主な理由は、自社に人材を定着させるためです。
企業や業務内容に対して不満があっても、愛社精神の強い人は、企業に対する想いから改善策を模索し、すぐに離職の選択には至りませんしかし愛社精神の低い人は、些細な不満が引き金となり「辞めようかな」「転職しようかな」と考えてしまう傾向があります。
 
離職者が多くなると、残った従業員の負担が大きくなり、さらなる離職者を増やしてしまうことになりかねません。またそのような職場は、離職に対する心理的ハードルも下がってしまうため、負のスパイラルに陥ります。
少子高齢化が叫ばれる現在の日本では、人材の確保が難しい状況です。さらに昨今の風潮として転職は、キャリアアップのための前向きなチャレンジとしてとらえられています。
 
せっかくコストと時間をかけて採用・育成した人材が離職してしまっては、企業にとって大きな損失。成長した優秀な人材を定着させるためにも、愛社精神を育むことは効果的です。
一般的に、中高年よりも若者の方が愛社精神を持たない傾向にあると言われています。離職率に悩む企業にとっては、特に若者の愛社精神を育むことが課題解決の近道になるかもしれません。
 

愛社精神が強い人の特徴と組織へのメリット

 
愛社精神が強い人は、個人のパフォーマンスが高いだけでなく、組織にもさまざまなプラスの効果をもたらします。
 

帰属意識が高い

愛社精神が強い人は、個人としてだけでなく、組織全体として高い成果を上げることを大事にしている人が多く見られます。例えば、チーム内で困っているメンバーがいれば積極的に声を掛けて、自身の知見を共有しサポートするなど、協力を惜しみません。
また、企業の名前を背負っているという意識が強く、コンプライアンスを遵守し、企業の名に恥じない振る舞いを心がけます。
 

貢献意欲が高い

愛社精神の強い人は、企業の成長を自分事として喜びます。そのため「企業が成長するためにできることは何か」「自社の商品・サービスをもっと利用してもらうにはどうすればよいか」を自主的に考え、行動します。
前向きに仕事に励む姿は、一緒に働くまわりの従業員にも良い刺激を与え、組織全体のモチベーションアップにもつながります。
 

困難な状況にも前向きに取り組む

仕事に困難やトラブルはつきもの。しかし愛社精神の強い人は、多少の困難も「成長の機会」ととらえ、前向きに取り組みます。
困難を乗り越える過程では、周囲の人を巻き込みチームで解決にあたることも。ひとつの目標に向かって力を合わせることは、組織に一体感を生み出します。
また困難を乗り越えた経験は、チーム一人ひとりの成長と自信になります。その経験と自信を糧に、次の困難にも前向きに取り組むことが期待できるため、人材育成の観点でもメリットをもたらします。
 

外部の人にも良い印象を与える

取引先と仕事をする中で、自社に誇りを持っているかどうかは、おのずと垣間見えてしまうもの。企業、ひいては自社の商品・サービスに自信を持って前向きに仕事をする姿勢は、取引を円滑にするとともに企業の評判をアップさせます。
SNSや転職サイトをはじめ、口コミが影響力を持つ昨今。企業の良いイメージは、業績に直結するだけでなく、まわりまわって優秀な人材を確保できる可能性を高めます。
 

従業員の愛社精神を高める5つの方法

 
従業員の中で自然と愛社精神が育まれるのを待つだけでなく、企業として「好きになってもらう」努力をすることも重要です。ここからは、従業員の愛社精神を高める方法をご紹介します。
 

1.企業理念やビジョン、行動指針を明確にする

理念やビジョンに共感できると、企業に対する信頼感が生まれます。日々の業務の中で従業員が判断に迷った時には、理念や行動指針に立ち返ることで、自然とその企業にとってより良い判断ができるようになります。
理念やビジョン、そして行動指針は、朝礼や社内ポータルサイトを利用して繰り返し伝えましょう。社内報で経営層の考えや想いを取り上げ、今後の展望を発信することも有効です。
 

2.働きやすい環境を作る

仕事とプライベートを切り分け、十分にリフレッシュできるようワークライフバランスを整えることも、愛社精神の醸成につながります。
愛社精神の名のもとに、過酷な労働を強いるのはもってのほか。「この環境では長く働き続けられない」という気持ちは、従業員の心が離れてしまう一因になります。
また、従業員の声を尊重することも重要です。提案やチャレンジを積極的に応援するだけでなく、要望や不満にも耳を傾けること。従業員の声を聞き入れて改善していくことで、従業員の信頼を得ることができます。
 

3.従業員エンゲージメントを高める

企業と従業員がお互い貢献し合って高める、エンゲージメント。企業から従業員への貢献として、従業員一人ひとりの努力や成果を適切に評価しましょう。上司と部下との面談の場や人事考査で評価すること、そして昇給など目に見える形で表すことも大切です。
努力した分だけ正当に評価してもらえることが従業員のモチベーションとなり、次の成果を生む。それをまた企業が評価するという好循環が生まれると、従業員エンゲージメントが高まります。
このような環境では自然と企業に対する想いも強くなるため、離職のリスクを下げることにもつながります。
 

4.コミュニケーションを活性化させる

「職場が好き」という理由の1つに挙がるのが、人間関係。職場の人間関係が良好だと「働くのが楽しい」「大変だけど頑張ろう」とポジティブな気持ちが生まれます。また、離職を踏みとどまらせる効果もあり、一時的な感情で離職を選択することが少なくなります。まずはチーム単位からコミュニケーションの活性化を図ることをおすすめします。
コミュニケーションが密になることで、部下や同僚の悩みに気付きやすくなるという側面も。早めに悩みに気付きサポートできれば、従業員の信頼も高まります。
 

5.福利厚生を充実させる

企業に対する満足度が高まると「この企業に貢献したい」という気持ちが自然と生まれます。
満足度を高める方法として、福利厚生は外せません。家賃補助や食事補助のほか、近年注目されているピアボーナスも有効です。
ピアボーナスは、従業員同士がお互いの仕事や言動に対して、感謝・称賛と少額の「報酬」を一緒に送り合う制度。人事評価では評価することができない貢献を評価することができます。仲間から評価されていることが直接的に伝わるため、従業員同士の絆が生まれやすく、組織の人間関係を円滑にしながら、従業員エンゲージメントを高められます。
 

愛社精神を高める際の注意点

 
愛社精神を重視するあまり、知らず知らずのうちに強要してしまうリスクも。特に新入社員といった新しいメンバーに愛社精神が育っていないのは当然のこと。「好きなって」と押し付けるのではなく、企業の良い面を徐々に知ってもらうようにしましょう。
社内報でその時々の企業の取り組みを紹介するほか、社員総会でさまざまな従業員と交流できる機会を作って社風を知ってもらうこと、他の従業員の想いに触れてもらうこともおすすめです。
また、コミュニケーションや従業員同士の結束が大事だからと、プライベートまで干渉することは禁物。仕事とプライベートの時間を分けたい人と考えている人は多いため、無理に踏み込まないよう注意が必要です。
 

まとめ

生産性の向上、離職率の低下、そして組織としての成長など、企業にとって多くのメリットをもたらす愛社精神。従業員にとっても、日々多くの時間を費やす場所だからこそ、企業を「好き」になるに越したことはありません。
離職の一因である「企業に合わない」は、言い換えれば「企業を好きになれない」ということ。企業と従業員、双方が望まない離職を避けるためにも、上手に愛社精神を育てていきましょう。
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